書評:ブラックサマーの殺人
MW・クレイヴンの『ブラックサマーの殺人』(ハヤカワ書房)を読んだ。前作も魅力的なキャラクターとスリリングかつ先の読めないミステリーで引き込まれたが、今回はさらに面白かったので紹介。
ちなみに今作は同著者によるワシントンポーの二作目であり、今の所翻訳では三作まで出ている。
あらすじ
ミシュラン認定のレストランを経営するスターシェフ、ジャレド・キートンと、彼が犯した(と想定される)殺人事件を巡る物語。前作に続く主人公であるワシントンポー警部は、6年前に担当した女性の殺人事件で、父親であるキートンを犯人として検挙し、その後キートンは刑務所に収監されていた。
しかし、殺されたはずのキートンの娘(ただし、当時遺体は発見されていなかった)が突然錯乱した状態で姿を現し、彼女はこの6年間監禁されており、犯人は父親ではなく別人だと証言。ポーは当時の操作の責任を負うことになり、窮地に立たされた状態で6年前の事件、そして新たに現れた殺されたはずの女性の真相を追うことになる。
書評
今回は、主人公であるポーの衝撃的な逮捕シーンから始まり、そのシーンに至る14日間になにがあったのか追っていく、という展開をとっている。そのため、前作に比べてポーが最初からかなり追い詰められる展開になっており、そこが読者としては引き込まれる大きなポイントになっていると思う。
実のところ、真犯人がキートンであること自体はそこまで疑問視されず、どちらかといえば新たに出現した女性の正体、キートンの娘の行方、そして裏で糸を引いている(はず)のキートンが一体何を企んで、どのように計画を実行しているのか、といった点を暴いていくところに面白さがある。終盤までこの点の謎は明らかではなく、最後までしっかり引きをもたせており、説明も十分に納得できる範囲(さまざまな偶然が重ならないと実行できない、という感はあるものの)。
さらに、キートンとの知恵比べ的な側面もあり、刻々と追い詰められ、打開策がないように見えるポーの状況にもハラハラさせられる。前作からの登場人物であるティリーやフリンといった魅力的なキャラクターも健在であり、小説に活気を与えている(ティリーはちょっと、デウスエクスマキナ感があるけど)。
終盤まで読者を緊張感に包み込み、最後まで納得のいく展開を見せる本作。前作から引き継がれた魅力的なキャラクターたちも活躍し、物語に深みを与えている。本格ミステリーが好きな読者にはぜひおすすめしたい一冊。